ワインエキスパートの2次試験は、ブラインドテイストです。
出題されるのは、赤ワイン2種・白ワイン2種・その他の酒類1種ですが、ワインについては「外観」や「香り」や「味わい」のコメントをマークシートで回答します。
正解が明確ではないため、どのように回答すると良いかわからないですよね。
そんな方のために、私が飲み比べをしたワインをワインエキスパート2次試験のマークシート形式に沿ってコメントを記載していきます。
ワインエキスパート2次試験を受験される方の参考になれば幸いです。
★2次試験対策のまとめ記事はこちらです
フランス産シャルドネ
シャルドネは、世界中の様々な地域でつくられている品種です。
そのため、ヨーロッパでつくられたワインと、ニューワールドでつくられたワインの両方があり、味わいにも違いがあります。試験では産地も問われるので、産地の違いが分かるようにしておきたい品種です。
私が飲み比べをしたのは、フランスブルゴーニュのシャブリで生産されている「ウィリアム フェーブル シャブリ」ヴィンテージ2018年です。(写真右)
ワインエキスパート2次試験のマークシート形式に合わせたコメントを掲載します。※あくまで参考なので、これが必ずしも正しい回答ではありません
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや強い |
外観の印象 | 若々しい、成熟度が高い |
シャルドネの外観は「イエロー」の色調が強く出るワインが多いですが、2018年という若いワインのため色調がグリーンがかっています。
粘性が高いため、「ニューワールドのシャルドネ」と思ってしまいそうですが、香りや味わいをとるまで決めつけてしまうのはNGです。
香り
第一印象 | 控えめな |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、リンゴ、すいかずら、アーモンド、ミント |
香辛・芳香・化学物質 | 石灰、火打石、貝殻、ヨード |
香りの印象 | 嫌気的な、第1アロマが強い |
「石灰・火打ち石・貝殻」というようなミネラル香が強く感じられます。そのためソーヴィニヨン・ブランか、リースリングに間違えてしまいそうですが、実はシャブリのシャルドネはミネラリーなのです。
※「ミネラル」を表現する際には「ヨード香」も使用します。ヨードは海藻や磯の香りのことで海苔のような香りにも感じられます。
また、このワインはステンレスタンクで熟成するので(一部樽熟成もあり)、ステンレスタンクの香りの特徴である「嫌気的な」という表現もできます。
味わい
アタック | やや強い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | しっかりとした |
苦み | 旨味をともなった |
バランス | 溌剌とした、ドライな |
アルコール | 中程度 |
余韻 | やや長い |
外観も香りもシャルドネらしくないため、味わいで「シャルドネ」であることを判断したいところです。
厚みのある味わいと、旨味をともなった味わいのため、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングではないと判断できるとよいのですが。
このワインの総合評価としては、「エレガントで、ミネラリー」なワインで、供出温度は8~10度、グラスは中庸です。
このワインは、Amazon、楽天市場、Yahooショッピングで購入可能です。
オーストラリア産シャルドネ
続いては、オーストラリア産のシャルドネ。
南オーストラリア クナワラの「パーカー フェイバリット サン/パーカー・クナワラ・エステート」ヴィンテージ2017年です。(写真左)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | レモンイエロー、イエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや強い |
外観の印象 | 若々しい、成熟度が高い |
粘性が強いため、アルコール度数が高いことが予想できます。そのため成熟度が高く、暖かい地域で育てられたブドウであることが推測できます。
香り
第一印象 | 開いている |
果実・花・植物 | リンゴ、洋なし、白桃、くるみ、アーモンド、白バラ |
香辛・芳香・化学物質 | 石灰、火打石、トースト、バター、ヴァニラ |
香りの印象 | ニュートラル、複雑性のある |
シャルドネは樽との親和性が高いため、樽熟成をする生産者が多い品種です。特に、ニューワールドの生産者はリッチなシャルドネにするために樽を使うケースが多いです。
このワインでは、樽香である「トースト」「バター」「ヴァニラ」の香りを拾うことができます。
味わい
アタック | やや強い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | やさしい |
苦み | コクを与える |
バランス | まろやかな、ふくよかな |
アルコール | やや強め |
余韻 | やや長い |
シャルドネの味わい(特に酸味)は、栽培地に大きく左右されます。
このワインの総合評価としては、「成熟度が高く、豊か」なワインで、供出温度は11~14度、グラスは中庸です。
※このワインは、ネットショップで購入できませんでした
フランス産ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランも世界中で栽培されている品種のひとつです。
私が飲み比べた銘柄は、フランスロワールのトゥーレーヌで生産される「ドメーヌ・ミショー トゥーレーヌ エクラ・ド・シレックス」ヴィンテージ2017年です。(写真左)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや強い |
外観の印象 | 若々しい、成熟度が高い |
粘性が高いためニューワールドのワインと思ってしまいがちですが、決めつけてしまうのは早いです。
香り
第一印象 | 開いている |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、メロン、マスカット、すいかずら、ヴェルヴェーヌ |
香辛・芳香・化学物質 | 石灰、コリアンダー、香木、花の蜜 |
香りの印象 | 若々しい、嫌気的な |
メロンやマスカットのようなフルーツの香りがとれるため、他の品種に間違えやすいですが、柑橘類や石灰などのソーヴィニヨン・ブランの特徴である香りもしっかり出ているため、香りでソーヴィニヨン・ブランと判断したいところです。
味わい
アタック | やや強い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | しっかりとした、ストレートな |
苦み | 旨味をともなった |
バランス | 溌剌とした、ドライな |
アルコール | やや強め |
余韻 | やや長い |
厚みがありふくよかな味わいですが、甘みが少なくドライ、酸がしっかりと感じられるソーヴィニヨン・ブランです。
このワインの総合評価としては、「エレガントでミネラリー」なワインで、供出温度は8~10度、グラスは中庸です。
このワインは、楽天市場、Yahooショッピングで購入可能です。
ニュージーランド産ソーヴィニョン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランはフランスのロワール地方やボルドー地方を代表する品種ですが、ニュージーランドでも代表的な品種となっています。
今回飲み比べた銘柄は「Cloudy Bay(クラウディー ベイ)」のヴィンテージ2018年です。(写真左)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや軽い |
外観の印象 | 若々しい、軽快な |
外観は「リースリング」とよく似た回答になります。
香り
第一印象 | 強い、華やかな |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、パッションフルーツ、すいかずら、メロン |
香辛・芳香・化学物質 | 貝殻、石灰、火打石、香木、ヨード |
香りの印象 | 若々しい、第1アロマが強い |
ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは、フランス産のソーヴィニヨン・ブランよりも香りが強いことが特徴です。
ソーヴィニヨン・ブランは柑橘系、特にグレープフルーツの香りが強く感じることができます。
味わい
アタック | やや軽い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | しっかりとした |
苦み | 控えめ、穏やかな |
バランス | スリムな、スムースな |
アルコール | 中程度 |
余韻 | やや短い |
ソーヴィニヨン・ブランは味わいもリースリングに、よく似た回答になります。
大きな違いは、香りの強さです。南半球のワインは温暖なため果実の香りが強くなります。
ちなみに、南半球のワインは、若いワインが流通することが多く、ワインエキスパート2次試験で出題される南半球のワインは、若いワインである可能性が高いです。
このワインの総合評価としては、「シンプル、フレッシュ感を楽しむ」であり、供出温度は8-10度、グラスは中庸のものを選択するのが〇です。
このワインは、Amazonや楽天市場、Yahooショッピングでも購入可能です。
フランス産リースリング
フランス産のリースリング。フランスのアルザス地方はリースリング発祥の地です。
私が飲み比べた銘柄は、アルザス地方で最も歴史のあるワイナリー「TRIMBACH(トリンバック)」のリースリングのヴィンテージ2017年です。(写真右)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや軽い |
外観の印象 | 若々しい、軽快な |
リースリングであればフランス産でなくても外観は、「澄んで輝きのあるグリーンがかったイエロー」と覚えておくことが試験的には〇です。
ちなみに、リースリングと似た外観としては、「ソーヴィニヨン・ブラン」があります。
香り
第一印象 | 開いている、(控えめな) |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、リンゴ、すいかずら、アカシア、菩提樹(ぺトロール) |
香辛・芳香・化学物質 | 石灰、火打石、コリアンダー、香木 |
香りの印象 | 若々しい、第1アロマが強い |
リースリングの香りの特徴としては、まずは「柑橘系」、そして「リンゴ」です。
また、「アカシア」の香りも拾うことができます。「アカシア」は華やかな印象を持った時に使用する香りです。
「ミネラル感」もリースリングの香りの大きな特徴ですが、これは「石灰・火打石」などで表現されます。
味わい
アタック | やや軽い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | しっかりとした |
苦み | 控えめ |
バランス | スリムな、スムースな |
アルコール | やや軽め |
余韻 | やや短い |
リースリングは、外観や香りで得た「青っぽさ」から、「ドライで酸味が強くスリム」な味わいが想像しやすいです。
「青っぽさ」は余韻も短くなるため、味わいに関しては回答しやすいと思います。
このワインの総合評価としては、「エレガントで、ミネラリー」であり、供出温度は8-10度、グラスは中庸のものを選択するのが〇です。
このワインは、Amazonや楽天市場、Yahooショッピングでも購入可能です。
フランス産ミュスカデ
ミュスカデは、冷害や害虫にも強い耐性がのある品種ですが、個性に乏しい品種ともいわれています。
私が飲み比べた銘柄は、ロワール地方のミュスカデを名乗るAOCの中で最大である、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌの「ミュスカデ セーブル エ メーヌ セレクション デ コニェット」ヴィンテージ2017年です。(写真右)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや軽い |
外観の印象 | 若々しい、軽快な |
ミュスカデの外観については、リースリングや、ソーヴィニヨン・ブランとほぼ一緒です。
色が淡い白ワインの外観は、ほとんどこの回答になります。この3品種の中でも、ミュスカデは特に色が淡いです。
香り
第一印象 | 控えめな |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、リンゴ、すいかずら、アニス |
香辛・芳香・化学物質 | パン・ドゥ・ミ(イースト)、石灰、火打石、ヨード |
香りの印象 | 若々しい、第1アロマが強い |
ミュスカデは香りが控えめなため、判別が難しい品種ですが、「シュル・リー製法」を採用してつくられることが多いため、パン・ドゥ・ミの香りが拾えることが特徴です。
シュル・リー製法とは
アルコール発酵後、澱引きを行わず、澱にワインを長期間接触させておく方法。澱由来の風味をワインに取り込むことにより、旨味を高めることができます。ロワールのミュスカデでよくみられる製法。
味わい
アタック | やや軽い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | 爽やかな |
苦み | 深みを与える、旨味をともなった |
バランス | スリムな、スムースな |
アルコール | やや軽め |
余韻 | やや短い |
ミュスカデは香りが乏しいことは伝えましたが、実は味わいも乏しい品種です。
シュル・リーによる「旨味」を感じることができれば充分ですが、難しいですね…。
このワインの総合評価としては、「シンプルでフレッシュ感のある」、「エレガントでミネラリー」なワインで、供出温度は8〜10度、グラスは小ぶりです。
このワインは、楽天市場で購入可能です。
フランス産シュナン・ブラン
シュナン・ブランは、フランスのロワール地方で多く栽培されている品種ですが、南アフリカでも「スティーン」という名前で栽培されています。
今回飲み比べた銘柄は、ロワールのトゥーレーヌで生産される「レ ピエ ロティ シャトー ド クーレーヌ」ヴィンテージ2015年です。(写真左)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | レモンイエロー、イエロー |
濃淡 | やや濃い |
粘性 | やや強い |
外観の印象 | 成熟度が高い、濃縮感が強い |
シュナン・ブランの色調は薄い麦わら色から、濃い黄金色まで幅広いですが、基本的にはイエローの色調が強いです。
香り
第一印象 | 開いている |
果実・花・植物 | 洋ナシ、花梨、白桃、アプリコット、マンゴー、アカシア、白バラ |
香辛・芳香・化学物質 | 石灰、火打石、ハチミツ、香木、花の蜜 |
香りの印象 | 第1アロマが強い、複雑性のある |
シュナン・ブランの香りは、蜜のような甘やかな香りと、花梨や白桃のような濃縮感のある果実の香りです。華やかでアロマティックな印象を受けます。
同じように香りの華やかな「ヴィオニエ」と間違えやすいので注意が必要です。
アカシアは、甘やかな香りを感じた時に使う表現で、白バラは華やかな印象を受けた時に使用します
味わい
アタック | やや強い |
甘味(アルコール) | まろやかな |
酸味 | しっかりとした |
苦み | 旨味をともなった |
バランス | ふくよかな |
アルコール | やや強め |
余韻 | やや長い |
シュナン・ブランの味わいの特徴は、しっかりとした酸味です。ただ、甘味も豊かであることが多く、果実感を感じられるふくよかな味わいに仕上がります。
このワインの総合評価としては、「成熟度が高く、豊か」なワインで、供出温度は11~14度、グラスは中庸です。
日本産 甲州
甲州は、日本を代表する品種で、香りが控えめなため、判別が難しい品種でもあります。
私が飲み比べをしたのは、山梨県の大和町で生産されている「勝沼酒造 甲州テロワール・セレクション 大和」ヴィンテージ2018年です。(写真右)
外観
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかった、レモンイエロー |
濃淡 | 薄い |
粘性 | さらっとした |
外観の印象 | 若々しい、軽快な |
甲州の色調は淡く、グリーンというよりもグレーがかったような、薄い色をしています。
完熟まで待たずに収穫されるため、色調が薄い傾向があります。
また、粘性も低いため、サラッとした印象があります。全体的にフランスのミュスカデと間違えやすいですが、ミュスカデの色調はもう少しイエローに近いです。
香り
第一印象 | 控えめな |
果実・花・植物 | 柑橘類、青りんご、リンゴ、スイカズラ、ミント、ヴェルヴェーヌ |
香辛・芳香・化学物質 | パン・ドゥ・ミ、石灰、火打石、コリアンダー、ヨード |
香りの印象 | 若々しい、第1アロマが強い |
甲州はミネラル香が特徴でもあり、このワインでもしっかり拾えることができます。
また味がない品種でもあるため、シュル・リーを行うことが多く、「パン・ドゥ・ミ」の香りも拾うことができます。
フランスのミュスカデもシュル・リーを行うことの多い品種であるため、このあたりもミュスカデと間違えやすい点です。
スイカズラは、白い花でシンプルな甘さを感じた時、ヴェルヴェーヌはハーブの香りを感じた時に表現する言葉です
味わい
アタック | 軽い |
甘味(アルコール) | ドライ |
酸味 | しっかりとした |
苦み | 旨味をともなった |
バランス | 溌剌とした、ドライな |
アルコール | 軽い |
余韻 | 短い |
アタックも、アルコールも軽くて、余韻も短い、サラッとした印象が甲州の特徴です。
甘みは少なく、酸がはっきりと感じられます。シュル・リーによる旨味を感じることができます。
日本酒的な酒粕のような風味を持っている甲州もあります。
このワインの総合評価としては、「シンプルでフレッシュ感を楽しむ」で、供出温度は8~10度、グラスは小ぶりです。
このワインは、楽天市場、Yahooショッピングで購入可能です。
まとめ
ワインエキスパートの2次試験を突破するためには、ただワインを飲んでいるだけでも、テキストで勉強するだけでも足りません。
飲んだワインを、テキストに表現されている言葉で、表現できるようになる必要があります。
上記は、あくまで参考なので、2次試験の勉強を本格的にはじめる前の、参考として読んでいただけるとよいなと思います。
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この記事は、「ソムリエ協会 2019年度版教本」と「ワインテイスティングの基礎知識 著:久保 將」を参考にしています。
「ワインテイスティングの基礎知識」に関しては、テイスティングについて細分化して説明してあったり、香りの捉え方と、たくさんあるワインの香りの特徴など詳しく説明されているため、とても参考になります。
ワインエキスパートを受験される方の役に立つ参考書です。